世界有数の時計ブランドを中心に、数多くの時計を吟味してきた福田氏。その慧眼をもって高く評価したのが、バブルレンズを備えるピカールだった。

「このレンズに尽きますね。『見て見て!』と、つい人に自慢したくなる。これくらい風防を分厚くしなくては、期待する防水性能を達成できなかった40~60年代の時計をオマージュしているのでしょうけど、そういうヴィンテージなストーリーにも心が踊ります」

福田氏の予想通り、ピカールは1960年にマリアナ海溝の最深部、1万916mにまで潜水艇で到達した海洋探検家ジャック・ピカール氏の偉業をオマージュしたものだ。
「デザインも上手です。真正面からはダイバーズ時計としてスタンダードな表情を見せるのに、サイドビューは実にユニーク。リューズは大きく、全体のバランスが取れています」

大仰なレンズに、大ぶりな径45mmケース。力強い主張を備えつつも、装着感のよさにも驚いたという。
「着け心地は、想像以上でした。ラグ部分のブレスレットの可動域が広いのと、ラグ先端が大きく下方に落ち込んでいるため、腕馴染みがいいんです。重量のあるモデルながら、装着したときの安定感も高い。すごいな、と素直に感心しました」

もうひとつ、福田氏の興味を強く引いたのがブラッドナーだ。50~60年代に流行したコンプレッサーケースを採用し、2時位置のリューズを回すことでインナーベゼルを操作できる。
「紫がかったブルーのグラデーションにゴールドを組み合わせたカラーリングに惹かれました。ビーズ・オブ・ライスのブレスレットも含めて70年代らしい雰囲気に満ち、“今の気分”にふさわしいのです」
福田氏は、ヴィンテージなウエアが流行る昨今のファッションシーンにも関心を寄せている。
「リーバイスのGジャンとか、米軍の軍パンとか。70年代のリアルクロージングを現代風に着こなすのに、ブラッドナーはちょうどいいアクセントになる。ファッションに敏感な若い子たちにも、刺さるんじゃないかな」

高硬度のサファイアガラスや輝度の高い蓄光塗料、搭載した日本製機械式ムーブメント「NH35」など、実用時計としての仕様も高く評価する。
「手が届きやすい価格で、ここまで高性能に仕上げているのは本当にすごいこと。純粋に『スピニカー、偉い!』と称賛を送りたいですね」

この他、50の“ファントム”が暗所で光る「フルース オートマティック セコンド/セコンド/ 2025エディション」や、ポパイの両腕が針替わりになった「チャレンジャー オートマティック ポパイ アンカーアーム リミテッドエディション」といったコラボモデルも、おすすめしたいモデルに挙げた。
「『ピカール』や『ブラッドナー』もそうですが、スピニカーの時計は着けていてとにかく楽しい。明るくて開放的な、イタリアらしいデザイン性を感じます。だから人に見せたくなるし、着けている自分もうれしい気持ちになる。お気に入りのTシャツを着たときのように、つい姿見の前に立ってみたり、外出したりしたくなるんです」

また、スピニカーが追求するダイバーズという領域についても、“楽しさ”の一端が宿っていると語る。
「ほとんどの人にとってダイバーズはオーバースペック。でも、そうした無駄・余白こそが“贅沢”の本質だと思うんです。なくても困らないけど、あるとうれしい、楽しいもの。腕時計自体が必須のツールでなくなっている現代において、ダイバーズはいっそうの“無駄”ですが、だからこそ楽しくて、惹かれてしまうんです。そんなダイバーズな上に、デザインにもこだわっているスピニカーは、そうとう“贅沢”なブランドだと思いますよ」

通称、ロック福田。建築設計の経験を経て出版業界へ転身し、『LEON』『ENGINE』『Chronos日本版』などで執筆。
FORZA STYLEの動画連載「ロック福田の腕時計魂!」に出演。
機械式時計の魅力を発信する。ロック音楽を愛する趣味人としても知られる。